青い空に言葉を乗せて・プロローグ




 四月七日。
 春の訪れを感じる風が吹く中。
 それでもまだ寒い青空の下…。
 …まだ誰も来ない中庭で…俺達は出会った。


「何やってるんだ、こんな所で…」
「遅いですよ。待ちくたびれちゃいました」
「ちゃんと寝てないと…治るものも…治らないぞ…」
「今日から学業復帰です」
「今日は始業式だ」
「それよりも、お昼ご飯、買ってきたんですよ」
「悪いな、もう昼飯は学食で済ませたんだ」
「駄目です。食べてもらいます」
「厳しいな」
「そういう、約束ですから」

 心地好い、寒くない風が吹く。

「『奇跡は起こらないから奇跡という』」

 小鳥が一声、鳴いた。

「…私、嘘つきですよね」
「…そうだな」
「私…私…」
「泣いても…いいんだぞ? 悲しい時も、泣いていいし…嬉しい時でも、泣いていいんだ」
「どうして、ですか…?」
「…男が先に泣く訳にはいかないだろ」
「あはは、そう…ですね…」

 抱き合う二人。
 名残雪が消え行く中起きた奇跡。
 …幻のような、奇跡。

「う…私…本当はっ…うぐっ…死にたくなかったんです! 独りぼっちで、死ぬ…なんて…!」
「大丈夫だ、俺が居るぞ」
「でも…でも…っ!」
「俺はずっと、お前の傍に居る」

 祐一は気付いていた。

「嬉しい、です…」

 栞の体が、仮初めである事に。

「アイス、食べようか」

「…はい」

 二人は、そんな事どうでも良かった。
 ただ、相手が目の前にいる事、それで十分だった。





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